神座桜縁起 後日譚

第1話:三盟21年、芦原にて

 

 潮風と、人の流れが交差する。昼時を前にした芦原に駆け込むその多くは旅人で、山道を抜けてきたとは思えない急ぎ足だ。あるいはそれは、浮足立っていると言うべきかもしれない。

 慌てて宿を探しに奔走する彼らを尻目に、提灯を飾ったり店先に出店を設ける姿が目抜き通りにずらりと並ぶ。磯の香りに混ざって既に食べ物の香しさがあたりに漂っており、気の早い者たちは酒壺を携えての食道楽に精を出している。

 

 

「お嬢さん、どうだい! こんな立派な姿焼き、他じゃ食べられないよ!」

 

 そんな中、悠然と通りを歩む少女は、客引きに軽く微笑んで返して見せる。

 妻折笠を目深に被ったその旅人の目元こそ見えないが、首を動かしてこの賑やかな町並みを眺める様は、いかにも物珍しらしげだ。大きな鍋で仕込まれる汁物から素朴な串団子、果てはありふれた蕎麦打ちまで、時折歩幅を狭めては眺めている。

 

 知らない祭に、それも祭が組み上がっていく光景に迷い込んだこの出会いを、目に焼き付けようとしているのだろうか。

 一足先に羽目を外す他の旅人とは違い、彼女の足取りに羽が生えて飛んでいくということはない。けれど、一筋の灰の差した長い黒髪は、背中でどこか楽しそうに揺れており、口元には隠しきれない高揚が滲んでいる。

 

 そうして少女が、閉めた店先でせっせと小魚に串を打つ小僧を、少し屈んでまで興味深そうに眺めていると、

 

「あ、あの!」

 

 背後からの声は、最初女の耳を素通りしていた。気付いた小僧が女とその背後を困ったように見比べたところで、咳払いを一つ、ようやく振り向いた。

 そこに居たのは、吸い込まれるような夜天の髪を持つ、儚げな雰囲気を纏った少女だ。

 

 小僧はお目にかかったことがないようだが、彼女はメガミの一柱、名をヤツハ。

 ヤツハは偶然の邂逅に驚いて、思わず声をかけたようだった。その両手は、串焼きの魚やらきゅうりやら、出店の品と思しきたくさんの食べ物で塞がっていた。一人で持つには多すぎるし、断りきれずに押し付けられたといったところだろう。

 

「おや、奇遇ですね」

「あぁ、やっぱり! ヲウ――」

「しーっ」

 

 そっと、ヤツハの口元を旅人が立てた人差し指が塞いだ。

 実際に指と唇が触れることはなかったが、ヤツハは驚きに言葉を飲み込み、そして意図を理解して慌てて辺りを見渡す。通りは大声でなければ会話が耳に入ることはない騒がしさで、間近の小僧がきょとんとするだけだった。

 

 ヤツハは小僧に会釈してから、ばつが悪そうに旅人の少女へと小さく頷いた。口を塞いだ指は今度は少女の口元に運ばれていて、答えの代わりにヤツハにだけ少し顔を見せてやった。

 それから、色々言いたげながらもどう切り出していいか、迷ってしまったヤツハに、旅人はくすりと笑う。

 そして、ヤツハの抱える大量の食べ物を指して、苦笑いと共に助け舟を出した。

 

「少し、お手伝いしましょうか?」

 

 

 

 

 

 喧騒に満ちる街中をしばし食べ歩き、漁もとうに終わった砂浜には、しかし少なくない熱気があった。燭台を並べたり漂流物を拾ったり、祭の前の静かな熱意を人々が醸し出している。

 そんな光景を遠くに見ながら、二人は浜の片隅で大きな流木に腰を下ろす。

 ちらりと人目を気にしてから笠を脱ぐ旅人の姿に、改めてヤツハは感嘆を見せた。

 

 

「旅に出た、という話だけは聞いてましたけど……」

 

 それに柔和に微笑み返すのは、メガミ・ヲウカ。

 無論、この地に根ざした者ではなく、向こう側の歴史から渡ってきたヲウカである。

 誰もがその名を知る少女は、ヤツハの手に残った二本の小さな林檎飴のうち、片方を手に取った。

 じっと、輝かしい赤にヲウカの視線が注がれている。

 

「色々と、ありまして。自分を見つめ直す必要がありました。あの戦いは、多かれ少なかれ我々メガミにそれを強いたようで、私も例外ではなかったということです」

「確かに、大変だったとホノカさんから少しだけ伺いました」

「あぁ……でしたら、私がどういう存在か、ご存知でしょうか?」

 

 ヤツハは齧っていた林檎飴から口を離し、慎重に頷いた。

 主神の再臨だと桜花拝の宮司たちを沸き立たせたこのヲウカだが、その正体はと言えば、向こう側の歴史におけるヲウカの転生体だ。すなわち、待ち望まれたヲウカ本人ではない、ホノカ同様に権威や能力に欠けた存在である。

 

 民にとっては、顔を見ることすら畏れ多いメガミであることには変わらないだろう。しかし、長い歴史の中でこの地に大きな影響を及ぼし続けてきたメガミを直に知る者とあらば、名を借りただけだと冷ややかな目を向けられるのも仕方がない。

 元々ヲウカの後継問題で荒れていた桜花拝だが、復興が進むにつれ、思い出したかのように再燃している。

 

 それでも、ヲウカには旅が必要だった。

 否、だからこそ、必要なのだ。

 欠けているものを探すために。

 

「かのヲウカが望んだ玉座とは如何なるものか、それを継ぐことが何を意味しているのか。もしかしたら、ヲウカの足跡を正しく読み解けば、真に理解できる日は来るかもしれません」

 

 ですが、とヲウカは顔を上げて、ぼんやりと地平の彼方を眺めた。

 

「果たしてそれらが、今日の桜降る代において意義があるか否か――そればかりは、どんな書物にも残されてはいません」

「意義……」

「まさか、脅威と見做していた存在の類縁と、こうして並んで座る日まで予見できていたとまでは思えません。この地の在り方が変わるのなら、玉座の意味もまた変わる……この今を生きる私がそれを見出だせなければ、ヲウカとして在るに相応しくはないでしょう」

 

 滔々と語るヲウカには、その名の重圧に苦しんでいる様子はない。事態に流されていた渡来の頃からすれば、いっそ憑き物でも落ちたかのようだった。

 そして彼女は、空いた手で足元の砂を掴んでから言った。

 

「そのためには、きちんと知らねばならないのですよ。この桜降る代を」

 

 一度固く握ってから手を開くと、乾いた砂はあっけなく手の中から流れ落ちていった。最後に残ったのは湿り気のあった砂だけで、ヲウカは肩を竦めてからそれも大地に還してみせた。

 一息ついたヲウカが林檎飴を口に含み、興味深そうに味わう。桜花拝で出されたものとはまた違った庶民の味に、ふんふんと頷いている。

 

 隣のヤツハは、その姿を見て顔を綻ばせた。

 何故ならヤツハもまた、旅人だったから。

 

「私にも、桜降る代を知るための日々がありました。右も左も分からなかったときも、迷っていたときも、友達と一緒にだって。今もまだ、行ったことのない場所もあるし、やりたいこともたくさんあるんですよ。ふふっ、困っちゃいますよね」

 

 はにかんだヤツハに、ヲウカも笑い返した。

 ただ、そこでヤツハは、何かに得心したように「あっ!」と声を上げると、

 

「やっぱり、お祭りのために芦原までいらしたんですね!?」

「え?」

 

 どういうわけか、急に興奮した様子で訊ねるヤツハに、ヲウカは少々困惑の色を見せた。

 

「え、ええ。存じてはいましたが、宮司から伝え聞くばかりで、実際に見たことはありませんでした。確か……年に二度の豊漁祭で、こちらでも有名なのでしたっけ?」

 

 ヲウカの答えに、ヤツハの目が輝いた。

 がしっ、とヲウカの手を包むように握る力は、それはもう、強かった。

 

「はい! 是非楽しんでいってください! 海の漢祭を――」

 

 

 

 

 黄昏の海岸。

 舞い踊る筋肉。

 大地を揺らす雄々しい叫び。

 

「「「ソイヤッ!」」」

 

 鍛え抜かれた身体を披露する褌一丁の漢たちに、老若男女入り混じった歓声が投げかけられる。躍動する肉体は伏せがちな夕日と肌を炙る篝火によって照らし出され、日に焼けた肌がはち切れんばかりの姿勢で彼らは鍛錬の証を見せつける。

 浜の砂を震わせるのは、打ち鳴らされる太鼓の音か、はたまた漢たちの肉体美か。風もないのにざわめく海が、人々の熱量を示している。

 

「…………」

 

 ヲウカは、この熱気に満ちた祭を眺めていた。

 敷かれた茣蓙で上品に膝を折り、背筋を伸ばして微動だにせず鑑賞している。

 その瞳は、漆黒の一色に染まっていた。

 

「ここで此度の祭でも、我らがハツミ様のご登場だァーーーッ!!」

 

 ひときわ大きな声を皮切りに、漢たちも観客も、一度しんと静まり返る。

 だが、一瞬鳴りを潜めた太鼓の重低音は、参加者の期待を煽るように徐々に激しさを取り戻していく。

 そして、最高潮を迎えたそのとき、筋肉たちの背後に広がっていた海の中から、丸い舞台がせり上がった。

 

 

 腕を組んで座し、衆目を一手に浴びるのは、深き海の底を思わせる衣装を纏ったハツミ。

 ぎゅるぎゅると、舞台を支える四つの絡繰の足が駆動し、浜辺へと――彼女を待ち侘びていた民によく見えるように移動する。

 抑えきれない興奮がざわめきを生み、祭の本番へと後押しする。

 

「さぁ、我らが肉林にて、我らが意思と鍛錬を捧げん!」

「「「応ッ!!!」」」

 

 先ほどまで人々に肉体美を披露していた漢たちが、ハツミのおわす舞台を取り囲んだ。

 螺旋が渦を成し、花開くが如く、思い思いの体勢にて描かれる筋肉が輪になって練り歩く。人々の間のみで一人の代表を決めるという愚を犯さず、ただ信奉するメガミに皆等しく拝謁を賜るための肉体神楽であった。

 

 あまりの感動故か、ハツミの組んだ腕が震えている。民をもっとよく見るために、今すぐこの大仰な椅子から立ち上がりたいと言わんばかりだ。

 そして、一周を終えた漢たちが、極めつけの姿勢で雄々しき筋肉を奉納した。

 割れんばかりの歓声に、海岸が再び満たされる。

 

「うおおおおぉぉぉ!」

「大海原より広い胸板!」

「デカすぎて年貢増やされそうだな!」

「肩から神座桜生えてんぞ!」

 

 溢れた想いを叫ぶ観客。誰もが目の前の光景に熱中する様に、ヲウカは言葉も出ないのか、口元をひくつかせるばかりだ。

 しかし、これだけで肉の宴は終わらない。

 ハツミの舞台後方から、扇状の貝殻めいた絡繰が持ち上がり、彼女の背に広がる。すると、そこに放射状に張り巡らされた光源が煌めき、鮮やかな桜と青緑の光が海岸を彩った。舞台上のハツミと、取り囲む筋肉が、より一層美しく照らし出される。

 

 さらなる煌めきに煽り立てられた漢たちは、高みを目指す。

 この祭のため――否、ハツミのため、ありったけの力で筋肉を膨れ上がらせ、ここに最高の肉体美を降臨させた。

 

「「「ハァーーー……ソイヤッ!!!」」」

 

 ヲウカは、空いた口が塞がらなかった。

 多く観衆がこの衝撃的な祭に熱狂し、地元住民に至っては俳人が寸評を告げるが如く、漢たちの身体を言葉を尽くして褒めそやしてすらいる。旅人までがその輪に加わっていくものだから、厳粛さとは全く無縁の祭事が出来上がっていた。

 

 そして、歓喜する客はヲウカの隣にもいる。

 ぱちぱちぱち、と。

 ヤツハが、舞台とハツミと漢たちに負けず劣らず、瞳を輝かせていた。

 

「すごいすごい! こんなに違って見えるんですね!」

 

 桜花拝のどんな書物にも、こんなときに返す言葉は載っていなかった。

 

 

 

 

 

 祭事という名の筋肉自慢大会が終わると、街に繰り出す者、宿に帰る者、その場で肉体を語り合う者と、人々は三々五々夜の芦原へと散っていく。

 そしてここにいるメガミは、余韻に浸る者だった。

 

「どうでしたか、ヲウカさん!」

「はっ――」

 

 声をかけられて、ヲウカは筋肉の世界からようやく意識を取り戻した。隣では、ヤツハが今日の星空よりもきらきらと目を輝かせて、ヲウカの感想を待っていた。

 いつの間にか、彼女たちの傍にはクルルが得意げな顔で立っていた。どうやらひと仕事終えて感想をヤツハに聞きに来て、そのついでにヲウカに話を振ったところのようだった。

 

「え、ええ、まあその……」

「凄かったでしょう……!?」

 

 しどろもどろになるヲウカ。しかし、あまりの内容に絶句していたとはいえ、照りつけるヤツハの純朴さに水を注すわけにはいかなかった。ましてや、一見受け入れ難いものを頭ごなしに否定するなど、彼女の前ではなおさらあってはならないのだから。

 時間稼ぎに口元を扇で隠しつつ、平静の仮面の裏で必死に考えを巡らせる。

 そうして指針を求めて遊ぶ目は、眩しいヤツハからクルルへと移った。

 咄嗟に絞り出した答えを聞こえの良い言葉にするのは、得意だった。

 

「そう、ですね。終盤にありました、絡繰による舞台照明……あれは演目として実に美麗でした。もしや、彼方の枝の技術が用いられているのではありませんか?」

「ごめいさぁーつ! あれにはもうひらめきが止まりませんでなあ!」

 

 この言葉を待っていたとばかりに、腕を組み上体を反らして高らかに笑う。何事かと視線が集まるものの、声の主がクルルと理解した者から、何事もなかったかのように元に戻っていった。

 

「では、あの装置はやはりあなたが」

「もちのろん! ……と言いたいとこですが、くるるん作は本体動力とのじょいんとだけなのですよ。なんとなんと今回は、活きの良い若手があいであ炸裂してくれちゃいまして、これが実にあめいじんぐだったわけです!」

 

 クルルは鼻も高々といった様子で、そのまま天に向けて鼻を伸ばしながら、例の発明の思い出の中に浸り始めてしまった。

 その様子にヲウカは苦笑いしつつも、辛うじて正気を保てた感覚にほっとする。

 そして、もう一つ気になっていた点をヤツハに告げた。

 

「あの舞台装置の光源が持つ直線的な意匠は、徒寄花のものとお見受けしました。それも、桜色の輝きと掛け合わされたあの配置です。神座桜と共にあるという主張には、驚きを禁じえませんでした」

 

 徒神との戦いの傷がまだ癒えきってはいない中で、あの苦境を想起させる表現は実に大胆だった。実際、残った徒寄花の骸晶に過剰反応を示す者たちを、ヲウカは旅の中でしばしば目撃したものだ。

 にもかかわらず、この祭は盛り上がる一方であった。

 

「芦原の人々が、まさかこれほど肯定的だとは。例に漏れず、ここも戦場だったという話でしたが」

「それは、ハツミさんのおかげなんです」

 

 染み入るように、ヤツハは告げた。

 当のハツミは、ミコトたちを先導して仲良く水鏡桜のほうへと泳いでいったきりで、ヤツハの眼差しは夜の海に遠く浮かぶ桜の光へと向けられていた。

 

「ハツミさんはここ三回ほど、徒神の恰好でこのお祭りに参加してくれているんです。私のために、一肌脱ぐって言って」

「そういうことでしたか」

「祭儀が終わった後も、ああして深く交流する時間を作ってくれてるんです。気が引けますけど、皆さんの肉体美を間近で見れて幸せそうなのが救いでしょうか」

「……そういうことでしたか。ま、まあ、趣味は人それぞれですから」

 

 小首を傾げたヤツハの視線を、ヲウカは咳払いでかわす。

 また不味い方向に話題が戻らないよう、すぐさま言葉を続けた。

 

「確かにそういった後押しがあれば、昨今の流れを踏まえると、不思議なことではなかったかもしれません。あの方々には本当に頭が上がりませんね」

「あぁ! はい、素敵な人達でした。今は六英雄と呼ばれているんでしたっけ」

 

 昔日を思い出すように、ヤツハはある種の切なさと温かさを滲ませる。

 ヲウカは閉じた扇子の先を顎に当てながら、神妙な面持ちで、

 

「あるいは、影見の五英雄だとも聞きます。あの三姉妹を唯一宿し、監視者の役を担った三人と、その険しい道を支える二人のミコトたち……。今後もあの姉妹への警戒を続けるべきなのですが、未だ、お任せするしかないのが歯がゆいところです」

「きっと、大丈夫ですよ」

 

 ヤツハの口ぶりは、確信に満ちたものだった。起きた事が事なだけに、多くの者がその保証を求めるのだろうけれど、ヲウカはあえて説明を求めなかった。

 どう折り合いをつけていくのが正解かなんて、誰にも分からない。

 そもそも、分かり合えるのかどうかすらも分からない。

 けれど、そんな相手と向き合うのに、理屈だけでは呑まれてしまう。それが、旅の中でヲウカが痛感した自省の一つであり、偶然にも、ヤツハに体現させられてしまったのだった。

 

 力なく微笑み返すのが、今の精一杯。

 真に主神として立つならば、やがてこの問題にも想いを以て応える日が来るだろう。

 肩にのしかかる重みが、また増えた気がした。

 

「はぁ……」

 

 訪れた沈黙を汚さないよう、ヲウカはそっとため息をついた。未だ祭の空気色濃い辺りの喧騒を、穏やかに味わう時間がふと現れた。

 自身の課題への思索を続ける傍ら、ぼんやりと風景を眺めていると、海岸の片隅に一旦避けられていたあの移動舞台が目に映る。舞台上の御座はもちろん今は空席だが、ほどほどの肉体の男たちが悔しそうに涙を流してそれを見つめていた。

 

 力こぶを作る一人の姿から、祭の情景が蘇ってくる。

 どうにか筋肉を極力無視して検めると、参加していた民の表情がヲウカには印象深く残っていた。彼らがハツミに向ける眼差しには、かつて桜花拝の宮司たちが御簾の奥で座すヲウカへ向けていたそれと重なるところがあった。

 

 だが、全く同じとは言えない。何かが違っている。

 舞台の上で静かに座したハツミが、人々に向ける視線はどのようなものだったか。

 そして、ヤツハはハツミの意図をなんと言っていたか。

 

 はっ、と。

 回想が晴れたその先に、ヲウカのよく知る一つの椅子が改めてそこにあった。

 

「あぁ……」

 

 ヲウカが願い、目指した玉座は――

 しかし。けれど。

 

 愛ゆえに――かつてそう願ったのだとしても。

 それはきっと、未だ恋だった。